【レトロパチンコ文化考察】第16回「年末年始のレトロな風景<1>」

(写真)1970年、クリスマスの頃の池袋「ひかり」

 気づけば、あっという間に2021年も終わろうとしています。ここ2年近く新型コロナ一色となってしまったものの、来年こそは良い年になっていくように願いを込め、今回から数回に渡って古き良き時代にあったパチンコの年末年始風景を探っていきたいと思います。

 上の写真は1970年12月下旬、都内池袋にあった「ひかり」というホール。現在は屋号も異なるスロット専門店になっていますが、この当時はネオン輝く人気パチンコ店の一つでした。雨上がりなのか、地面が濡れていてひんやりした情景が伝わってくる中、まずは店内に入ってみましょう。

(写真)池袋「ひかり」店内写真。天井にモールやオーナメントがぶら下がっている

 クリスマスの時期ということもあり、天井のところどころにキラキラしたモールと丸いオーナメントがぶら下げられています。

 よく見ると、右側と中央の島(台が並ぶ一塊のこと)のお客さんは椅子に座っていますが、左端は立って打つコーナーになっており、当時はまだ両者が混在していたことが分かります。

(写真)「ひかり」の玉貸し&景品カウンターにもクリスマス装飾が

 そして玉貸しおよび景品交換所に目を移すと、こちらにもキラキラとモールが飾り付けられていて、クリスマス気分を盛り上げていました。

 ちなみに、右側の女性の前にある金属製の大きなカップのような装置が玉貸し機になっており、お客さんはここで玉を借りることができますが、1つ前の写真には「自動玉貸し機」が写っており、機械と手作業による玉貸しが混在していた時代だったことも分かります。

 さらに時代を感じる風景として、このホールの外観にも再び注目してみますと……。

(写真)「ひかり」外の壁面に書かれた『エレコンSS』PR

 当時、最新式だった平和のマシン『エレコンSS』が、壁一面でプッシュされています。

「どういう訳か玉がタテに出る?」

 というキャッチ部分が気になって、少し調べてみました。

 平和が1970年に発売した『エレコンSS』は、盤面の右側に縦型の払い出し装置が付いており、従来主流だった「盤面中央に次回払い出し用の玉を準備しておく」という構造から脱却。それによって、静電気や玉の汚れに影響されることなく素早い払い出し(メーカーの説明によれば1分間50回という、従来の38回を遥かにしのぐ回数)を実現しているのだそうです。

 なぜ高速払い出しがアピールされていたのかというと、パチンコでは前年1分間に100発打てる機種が解禁となり、いかにスピーディーに売り上げを伸ばすかがメーカー・ホールにとっての注目ポイントだったからです。

 また、中央に玉をスタンバイさせる必要がないため、役物の形も自由自在になっていく……というのも、このマシンのセールスポイントだったようです。当時の業界向け広告も見つけたので貼っておきますと…

(写真)1970年の、業界向け広告より

「イヤというほど売り上げが上がっても平和は責任持ちませんよ!」

 と、“音速超高速機”『エレコンSS』の素晴らしさをこれでもか! と訴えているのがすごいですね(笑)。平和ではその後も1973年に電動ハンドルが普及し始めるまで、縦型払い出しケースが付いた台を発売していたようです。

 今回は1970年末の風景と当時の最新式パチンコについて、駆け足ですが振り返ってみました。今よりはのんびりした時代だったものの、技術のスピードが着々と伸びていたことも感じられますね。

※写真協力…(株)遊技ジャーナル社

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