【ぱちんこヒューマン】第4回:*ゼロタイガー40年*羽根モノ全盛期を支えた開発者インタビュー(後編)

 2021年は、羽根モノの元祖『ゼロタイガー』登場から40年。それを記念して、前回から(株)平和協力により関係者インタビューを掲載しています。

◎前編はこちら

 二回に渡りお届けしているのは、昭和から現在にかけて数々のヒット羽根モノを手がけられて来た、開発者お二人へのインタビューです。

 出席頂いたのは役物設計担当の佐藤卓也氏および、デザイン担当の藤川詔康氏。現在、平和の嘱託社員として後進の育成などにも尽力されているエキスパートのお二人に、後編ではヒットの秘訣や今後の羽根モノへの提言などについてお聞きしました(※インタビューは書面でのやりとりを含め、マスク着用や換気等新型コロナ対策を十分とった状態で行っています)。

<出席者プロフィール・敬称略>

佐藤 卓也…(株)平和 開発本部 設計グループ 設計チーム所属。1984(昭和59)年入社。役物設計を担当し、『スフィンクス』『モンキータクシー』『ぽんぽこ林』などの羽根モノを手がける。現在好きな機種は『戦国乙女』で、ハマっていることはゴルフとフィッシング。

藤川 詔康(のりやす)…(株)平和 開発本部 設計グループ IDチーム所属。1983(昭和58)年入社。デザイン関係を担当し、『安来名人』『スーパービンゴ』『ファクトリー』などの羽根モノを手がける。現在好きな機種は『トキオシリーズ』で、ハマっていることはジョギングとApple製品。

▲▽ビッグシューターは全てが衝撃だった▽▲

編集部(以下『編』)…羽根モノの歴史を振り返ってみますと、初期の『ゼロタイガー』以降10カウントや貯留付き、出玉増、ラウンド振り分けなど大きな転換期がいくつかありました。御社のエポックメイキングな機種も多数存在しますが、そうした流れを振り返って印象深かったことはありましたか?

佐藤(以下『佐』)「弊社が初めて貯留を搭載し1986年に発売した『ビッグシューター』には、本当に驚きました。実は当時先輩に試作段階の役物をこっそり見せてもらったことがあったのですが、その時の衝撃はすごかったですね。あんな面白い役物を見たことがなく、ドキドキが止まりませんでした」

(写真)ビッグシューターカタログには、貯留の説明が大きく掲載されていた

編…そのお気持ちは解ります。『ビッグシューター』は貯留を見て役物が壊れたと思う人が続出したぐらい、歴史をひっくり返すような存在でしたから。

佐「実はその次の日から、自分が開発した『スフィンクス』を貯留を生かすように改良した『スフィンクスV2』を2日間で完成させてしまったぐらい、触発されましたね」

藤川(以下『藤』)「私も、貯留式の『ビッグシューター』が発売された時は本当に期待していましたね。画期的で期待度が大きかった分、許認可もだいぶ待たされてしまったエピソードもありましたが……」

編…『ビッグシューター』には、やはり社内でも大きな期待があったのですね。

藤「さらにその後継機の『ミラクルシューター』も、3D回転する役物の試作を見てかっこいいな! と感動したのを覚えています。手前味噌になりますが、やはり弊社の開発力はすごいと思いました」

▲▽羽根モノヒットの秘訣とは?▽▲

(写真)役物設計を担当する佐藤氏

編…お二人が羽根モノの開発において、こだわっていらっしゃる部分はどういうところでしょうか? また、羽根モノがヒットするための秘訣がありましたら教えて下さい。

佐「こだわっているのはホール様に納品した製品が故障しないことと、性能にばらつきがないことですね。いわゆる“クセ”のようなばらつきが強過ぎると、お客様が敬遠して空き台が出て来るなどホール様にご迷惑をかけることになってしまうので、絶対に避けなければなりません。そういう意味でも、ヒットする条件としては適度なVゾーン入賞のスランプと、Vに入る“間”が良いものと考えています。例えるなら、ゴルフのカップインする感じでしょうか」

藤「私がこだわっているのは、楽しめることとその機種にある世界観や初見で興味を持って頂けるかどうか、といった部分ですね。そしてヒットするためにはやはり『ゼロタイガー』や『ビッグシューター』などのように業界初の仕様や役物動作によって驚きを持ってもらい、玉の動きやVに入る瞬間で熱くなれるかどうか。さらに出玉スランプの波がいいものが、ヒットの要素として欠かせないのではと考えます」

▲▽今後も羽根モノが存続して行くためには▽▲

(写真)デザインを担当する藤川氏

編…さて、羽根モノについてここまで主に全盛期と言われた昭和〜平成時代についてお話をうかがって来ました。しかし時が経つにつれ、規則改正や市場の変化などによって苦戦を強いられるようになっています。そうした現状と“羽根モノタイプ”と呼ばれるジャンルが今後生き延びて行くために、何かお考えやヒントがあれば教えて下さい。

佐「今後はやはり、市場のニーズに合う羽根モノを考えていかなければならないと思いますが、元々その原点は小さな射倖性がある遊びだったはずです。その意味で、もう少し総出玉数を抑え目にしてV入賞率を緩和した方がいいのではないかとも思います」

藤「今ではすっかりチューリップ台も無くなってしまいましたから、次は羽根モノかな……と、大きな危機感を持っています。しかし長時間遊べるジャンルとして羽根モノは必要ですし、存続して行くためにはトキオシリーズだけでなく、弊社含め多くのメーカーさんからもラインアップが揃って行くことが大切だと思います。そうすることでファンの方に選択肢が生まれ、興味も持って頂けるのではないでしょうか」

(写真)お二人の開発への熱意は変わらない

編…確かに、羽根モノの射倖性が上がり過ぎたり機種数が減ってしまったり、今後について考えるべきことは沢山ありそうですね。そんな中、いよいよ今月には『Pニュートキオ』が導入開始となります。期待されているファンの皆さまへ今後の羽根モノタイプにつきまして、メッセージをお願い致します。

佐・藤「弊社では羽根モノファンの皆さまに向けたエポックメイキングな機種の開発に、日々取り組んでおります。少ない投資で遊べ、玉の動きが面白い機種の登場にご期待下さい」

編…今後も期待しております。有り難うございました。

◎前後編、二回に渡ってお送りして来た羽根モノ開発者インタビュー、いかがでしたでしょうか。次回は引き続き(株)平和協力により新機種『Pニュートキオ』開発者にご登場頂き、シリーズ誕生の秘密やエピソードをタップリと語って頂きます。ぜひご期待下さい!