【球面体ノート30】ぱちんこ夢の国奇譚
- 2022.08.12
- 球面体ノート
先月、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドの第1四半期決算が発表され、売上高が大きく伸びていることがニュースとなりました。ここ数年コロナ禍で大打撃を受けたレジャー業界ですが、8月上旬現在政府が行動制限なしの“ウィズコロナ政策”に切り替えていることから今後もV字回復基調が期待されているようで、株価も伸びています。
レジャー業界の雄として昔から注目されているディズニーは、はるか昔からパチンコ業界からも熱視線を集めており、上の写真のような「見たことあるキャラ」(見切れていてすみません)がホールの集客目的のためにしばしば使われることが多かったようです。
しかしもちろん、そのような無断使用は認められるはずがなく、1970年米国法人が日本のパチンコ業界誌に警告文を掲載していました。
これはかなり珍しい広告になりますが、それほど看過できない状況であったことが想像できます。東京ディズニーランド開業が1983年ですから、その遥か前からディズニーキャラたちがこっそりと使われて来たことになり、改めてその人気ぶりにも驚かされます。
ところがパチンコ業界ではあまり意に介すことがなかったのか、その後も「夢の国」関係とおぼしきキャラクターたちがホールや台の中に出てくることがしばしば。
こちらは新橋の「ニュー新橋ビル」内にあった「宇宙会館(のちトヨタとなり閉店)」の様子ですが、もはや堂々すぎる体でミッキーたちが集客に一役買って? います。ちなみに左下の方には「ベルばら?」のようなキャラも見受けられます(笑)。
こちらも、ホールの窓ガラスに堂々と使われていたミッキーもどき。いわゆる「目隠し」なので、もしかしたら設備業者の用意したデザインかもしれませんが、あまりにも露骨すぎますね(笑)。
また、遊技機でも1980年に登場したアレンジボールの中に、かなり危ない酷似キャラクターを使用しているものもあり、警告文から10年経っても夢の国への思いが途絶えることはなかったようです。
そうした状況は、笑いのネタになることがあっても深刻な社会問題として取り上げられることはありませんでしたが、1989年遂に大きな注目を集める裁判が行われます。
それは、福岡県で「ディズニー」の屋号で巨大パチンコ店を経営する「西日本ディズニー」を相手取り、ザ ウォルト ディズニー カンパニーが「不正競争防止法」違反にあたるとして訴訟を起こしたというもの。
結局、ディズニー側の言い分が認められ、西日本ディズニーは社名や屋号の変更に至っていますが、この裁判付近からやはりパチンコ業界でも意匠や著作権に対する意識が変わって来たのか、だんだん怪しいキャラは姿を消していったように思われます。
ある意味「まとも」な業界になっていったとも言えますが、今回改めて振り返ってみると集客のためにちょっとキャラを変えてみたり、涙ぐましい時代があったのだな……と、何だかしみじみ感じてしまったりもするのです。
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