【ぱちんこヒューマン】第7回:「新しいぱちんこのリーダーたち」豊丸産業(株)常務取締役・永野弘之氏インタビュー(前編)

 昨年末、全日遊連(ホールの全国組織)加盟店舗が6000軒前半になってしまったパチンコ業界。老舗メーカーの廃業なども記憶に新しい一方で、業界の立て直しを模索するリーダーたちがいます。今回そして次回は、そんな「新しいリーダー」の一人として豊丸産業常務取締役の永野弘之氏に登場頂き、ユニークな歩みを続ける同社のエピソードや新機種にかける思い、業界に対する提言などを語って頂きました。

<永野弘之氏プロフィール>

1996年大学卒業後、大手電子機器メーカー入社。1998年豊丸産業入社後、大阪営業所所長(2006年)、営業本部長(2009年)、取締役営業本部長(2015年)、常務取締役管理本部長(2020年)などを歴任し、2023年より常務取締役・常務執行役員・社長補佐に就任。現在は豊丸の“顔”として、社長を補佐しながら新たなイノベーションを巻き起こすべく、様々なプロジェクトを進行中。趣味は野球観戦(中日ドラゴンズのファン)で、運動も兼ねて城めぐりをするのがマイブーム。

編集部(以下『編』)…まずは永野常務のパチンコ体験や、入社のいきさつについて教えて下さい。

永野(以下『永』)…学生時代などにパチンコは打っていたのですが、パチンコ店でアルバイトをしたことがありまして、台の仕組みやホール経営などを勉強しているうち、すっかり魅力にハマってしまいました。パチンコ業界に就職したいと考えるようになったのは、それがきっかけでしたね。

編…常務は1998年入社とのことですが、当時のパチンコ業界や業務内容について覚えておられることがありましたら教えて下さい。

永…入社当時は弊社の『CRモーレツ原始人』がヒットしており、その後も巨大7セグで潜伏確変を搭載した『CRデラマイッタ』や、ポリゴン(3D)搭載の『CRデンデンデン』も大きな反響を頂きました。当時は私も営業の現場にいたのですが、とにかく問い合わせがすごくて留守電が何件も入っていたり嬉しい悲鳴状態でしたね。1990年代から2000年代にかけては、幕張メッセなどで盛大にフェアを開催するなどパチンコ業界も勢いがありましたから、いい時代だったと思います。

編…確かに、今では考えられない規模でしたね。そのような中、御社でも初の3D表示を使った『CRカンカン天国』などエポックメイキングな機種も多く発表されています。

永…『カンカン天国』はリーチの一部分ではありましたが、初めての3D表示で話題を呼びました。また、2000年代以降も「たんぱち(驚する面白さ、簡遊技、時間でも遊べる)」というコンセプトから生まれた『CR餃子の王将』は、以降も『すしざんまい』『高須クリニック』など、弊社を代表する役物シリーズとなっています。他にもスペックを工夫して生まれた『ウィッチブレイド』『天上のランプマスター』といった機種や、遊びやすさを追求した『コマコマ倶楽部with坂本冬美』も、導入から一年半以上が経過しておりますが、おかげ様で現在も高稼働をキープしております。

編…それからやはり『ナナシー』などは完成度もさることながら、有名パチプロの方(故・田山幸憲氏)が非常に愛着を持っておられたこともあって、話題性も人気も抜群でしたね。

永…『ナナシー』は現在も続く看板シリーズとなっていますし、今後も大切にしていきたいと思います。社員の中には田山プロの墓参りに伺っている者もおりますね。

編…そうなのですか。完成度と言えば『餃子の王将』の役物も非常に影響が大きかったと思います。

永…餃子の王将でアイデアの元となった「たんぱち」は、お客様のニーズも様々で短時間で遊技したい方もおられるはずだ、という思いから誕生したゲーム性でした。弊社としては、常にパチンコとして面白いもの、“ぱちんこらしさ”というものを大切にしていきたいと思っております。

編…そうした、原点を大切にする思いから生まれた新機種『Pこの素晴らしい世界に祝福を!199LT「このラッキートリガーに祝福を!」』についてもお話を伺いたいのですが、コラボの経緯や狙い、何かエピソードがありましたら教えて下さい。

永…アニメ作品自体のターゲットは20~30代の若年層ではありますが、ご覧の通りキャラクターや内容が親しみやすいこともあって、万人に受け入れてもらえるコンテンツであると感じたため、版権取得させて頂きました。実は、当初はもう少し尖った(波が荒い)スペックで開発を進めていたのですが、コンテンツの相性と現在の市場状況を鑑みて「万人に遊んでもらいやすい100%ST突入のライトミドルスペック」に大幅変更した経緯がありました。その後、新たに「ラッキートリガー」というシステムも搭載することになったのですが、これまでの理由からあくまでもラッキートリガーは「おまけ程度」の位置づけとすることになったんです。

編…確かに、いいコンテンツだからこそ多くの方に楽しんで頂きたい思いが伝わってきます。

永…「このすば」というコンテンツの持ち味を大切にしつつ、「パチンコとして面白い」を重視して開発を行いました。加えて新規作画や楽曲も多く搭載しており、「このすば」ファンはもちろんですが、遊びやすいスペックと分かりやすいゲームフローとなっておりますので、パチンコファンの皆様にも必ず満足して頂ける仕上がりになっています。もちろんカスタマイズも充実していますので、ぜひお気に入りの組み合わせを探して頂きたいですね。(後編へ続く)

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 後編では、大きく変化する昨今のパチンコ業界への提言や豊丸のこだわり、さらには永野常務が選んだ「今年を表す漢字一文字」まで様々な角度から語って頂きますので、お楽しみに!