【レトロパチンコ文化考察】第32回:いにしえ展示会シリーズ「’91パチンコ博 in 大阪」

▼どんな展示会だった?

(写真)パチンコ博オープン前の入り口にて、セレモニーの様子

 1991年8月28日(水)・29日(木)両日、大阪府の「インテックス大阪」にて開催され、業界関係者を中心に約1万6000人が来場。

 パチンコ・パチスロメーカーをはじめ関連機器など多数がブースを出展。中でも一番の目玉は組合による「カード式遊技機(後のCR機)」見本機の展示だった。

▼1991年の遊技業界は?

 1990年10月から試行された規則の一部改正(新要件などと呼ばれた)によって、パチンコでは「1回の入賞による出玉が最高13個から15個に」「大当り継続ラウンド数が10回から16回までに」「おまけチャッカー廃止」「一発台廃止」といった大きな変革を迎えていた。

 パチンコ博ではそうした新時代を広く知らしめるとともに、更なる「カード遊技機時代」を見越した展示を行っていた。

▼目玉その1…「カード式遊技機」見本機

(写真)カード式遊技機コーナー。パチンコとパチスロが展示された

 パチンコ(日工組)、パチスロ(日電協)両組合がブースを設け、それぞれのカード式遊技機見本機を展示。会場のみで使える1000円分のプリペイドカードが配布され、自由に打つことができた。

 あくまでも見本機であるため、新規に開発というより既存の台を改造したようなものがほとんどで、スペックも統一されてはいなかった。

(写真)カード式遊技機は、ほとんどが既存の台を改造したものだった

 ちなみにパチンコのカード式遊技機は翌1992年「CR機(※CRの意味は、当初メーカーから“CaRd”の略であると発表されたが、しかるべき機関から公式アナウンスがなかったため“Card Reserve”や“Card Reader”など諸説がある)」として発表された一方、パチスロのカード式タイプは2006年に高砂から『CS(Card Slot)スロ原人』が発売された以外、製品化されていない。

▼目玉その2…「パチコン」

 パチンコ博は、各社にとって試験的な試みなどを発表する場でもあった。組合を挙げての目玉企画が「カード式遊技機」だったのに対し、ユニバーサルが目玉として展示したのが「パチコン」だった(※エーアイのパチコン『ビクトリー』含む)。

 パチコンとは「確率の6段階設定を搭載したパチンコ機」であり「釘調整不要ながら1分間のデジタル回転数を一定にするよう、電チューが適宜開放を行って入賞サポートをする」という仕組みを搭載した次世代型マシン。

(写真)『GIGA』は1分間のスタート調整によってチューリップが開閉する

 ブースには第一弾『GIGA』が多数展示され、人々の注目を集めた。そして鳴り物入りでホール導入も果たしたが、電チュー開放の集中「チューリップパニック」狙い打ち攻略法の発覚などにより、撤去されてしまった。

 その後も『ジェネシス』などパチコン自体は続けられたが、いつの間にかCR機(デジパチタイプ)のみへと変わっていった。しかしその発想自体は後世に大きな影響を与えている。

▼実験的発表その1…「釘師万吉」

(写真)釘調整を自動化した「釘師万吉」を覗き込む関係者

 新要件施行においては、特に「釘は盤面におおむね垂直」という認識が再確認され、そうした調整を正確に行うべく「釘師万吉」という自動釘調整マシンも展示されていた。

 同機は平和とタイヨーエレックが共同開発を行い、後に『麻雀物語』の液晶を担当したセイコーエプソンが技術協力をしている。

 会場では何度かデモンストレーションが行われて見入る人も続出していたが、結局製品化されたりホールに導入されたというニュースは残っていない。

▼実験的発表その2…「キャリーレス」

(写真)竹屋ブースのメインは玉の還元や研磨の最新システムだった

 竹屋は90年代半ば『CRモンスターハウス』のヒットがあったものの、基本は島還元などホールのシステムを支える技術をメインに提供して来た企業。パチンコ博のブースでも、機種より還元システム等を全面に押し出していた。

(写真)各台計数のアイデアの元祖とも言える? キャリーレス

 それらの中で人目を引いていたのが「キャリーレス」というシステム。これは、出玉を各台で計数してレシートを発行するというもので、後の各台計数システムの元祖? といえるかもしれない。

 しかし、その後製品化や導入には至っていないようだ。

▼お蔵入り、芸能人ゲスト、ミスコン…その他色々

(写真)バルテックのブースにあった『アンクルサム』

 様々な新製品の発表の中には、そのままお蔵入りになってしまった台も少なくなかった。上の写真は、バルテックで展示されていた3号機『アンクルサム』だが(※保通協の試験中なのでガラス内での展示のみ)、そのまま日の目を見ることはなかった。

 他にもアークテクニコの『スパイス』、平和の『かっとび大吉』などいくつかの機種はお蔵入りとなってしまったようだ。

(写真)平和のブースでトークショーを行うRIKACO

 パチンコ博の会場は、いわば「お祭り騒ぎ」の場でもあった。芸能人のトークショーなども行われ、関係者の後日談によればA社がやればB社も……といった具合に競争するような雰囲気もあったという。

 特に大阪が会場であったためか、お笑い芸人が訪れていたブースが多かったイメージがある。

(写真)珍しいミスコンが開催された、京楽のブース

 最後に、会場で異色だったのが、京楽が開催したイメージガールのミスコン。松尾坂内らの進行により、予選を勝ち抜いた女性たちが特技を披露。会場のギャラリーによる最終投票で2名が選考された。

 彼女達はその後、『フルーツパラダイス』などいくつかの機種のカタログやポスターにも登場している。

▼後日談、エピソード

 

 さて、このパチンコ博ではカード式よりももっと目玉になりそうな新機種が、なぜか展示されなかった。その機種とは、パチンコ初のカラー液晶表示を搭載した平和の『麻雀物語』。

 同機種は約半月ほどしてから平和の各営業所にて発表され、予想通り30万台を越える大ヒットとなった。今さらながら、このタイミングは何か関係していたのかが気になるところだ。

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