【ぱちんこヒューマン】第9回:「新しいぱちんこのリーダーたち」(株)三洋物産代表取締役社長・盧 昇氏インタビュー(前編)

 年々厳しさを増すパチンコ業界にあって、その状況を立て直すべく挑戦を続ける新しいリーダーたち。今回そして次回は、25年以上に渡って業界をけん引する『海物語』シリーズでおなじみ、(株)三洋物産社長に就任された盧 昇(ろ のぼる)氏にご登場頂き、同シリーズの魅力をはじめ現状打破への意気込み、業界の未来像などについてお話を伺いました。

<盧 昇氏プロフィール>

大学卒業後、大手生命保険会社を経て2002年に(株)三洋物産入社。2006年同社取締役、2011年常務取締役、2015年代表取締役専務、2019年代表取締役副社長、2024年代表取締役社長就任。趣味はゴルフ。

編集部(以下『編』)…盧社長は2002年に中途入社されたとのことですが、当初は具体的にどのような仕事をされていたのですか?

盧社長(以下『盧』)… 最初は新規で立ち上がった部署で、プロモーションの企画やSNSの強化、番組の立ち上げ、サンゴ保全活動やライフセービング支援の社会貢献事業を行いました。並行して社内の基幹システムの構築や新卒採用など、当時まだ弊社で整っていなかった部門を進めていきました。また2003年からイメージガール「ミスマリンちゃん」の企画をスタートし、現在もご好評頂いています。2000年頃はパチンコが元気で『海物語』シリーズも人気を頂きましたが、その状態がずっと続かないのではないかという危惧もあって、ブランドの確立を目指していました。当時は同業他社が版権とのタイアップを強化したり、派手な役物を搭載したりと画期的な遊技機が続々と登場していた頃で、そういう影響もあり三洋ならではの自社コンテンツを育てていきたい思いも強くありました。

編…そうした中で、特に印象に残っている機種はありますか?

盧…一つ挙げるなら、『CRハイパー海物語 IN カリブ』でしょうか。この機種は2007年に約40万台が市場に導入されました。1年近く稼働貢献し、今でいえば立派な「高稼働機」だと思いますが、当時はたくさんのご意見を頂戴しました。“海物語の殻を打ち破ろう”という思いを込めて左右非対称ゲージにして右打ちを取り入れたり、演出構成もガラリと変えた意欲作だったのですが、そうしたチャレンジがお客様を不安にさせてしまった部分もあるのかもしれません。

(写真)2007年『CRハイパー海物語INカリブ』発表会にて

編…裏を返すとやはり、それだけ海物語シリーズ新作への期待感が大きかったということでしょうね。

盧…本当にありがたいですね。ただ、当時頂いた様々なご意見も「今後の糧にして先に進んでいこう」という前向きな方向性や、新たなチャレンジに繋がっていると思います。

編…その『海物語』ですが、前身の権利物『ギンギラパラダイス』を含めますと30年近くパチンコ業界をけん引する存在となっています。社長ご自身は、ロングヒットの秘訣や魅力についてどのように分析しておられますか?

盧… 当時の弊社はまだ主流のデジパチより権利物などで勝負をかけるしかなかった、いわばチャレンジャーでした。しかしギンパラのヒットによって自信が生まれ、大胆な試みも行えるようになった中で『海物語』へと繋がっていきました。 『海物語』のヒットについては、やはりゲームシステムが秀逸だったということに尽きるのではないでしょうか。横スクロール、5ライン、当り方など大げさかもしれませんが、囲碁や将棋、麻雀、人生ゲーム、UNOなどのように普遍的なゲーム性といえるかもしれません。

編…確かに、これだけ多くの方が毎日打っても飽きないのですから、そうしたゲーム性の域に達しているかもしれませんね。また、『大海物語』で登場した「3つのモード」も、後に欠かせないターニングポイントであったと思われますが、いかがでしょうか。

盧…2005年に発売した『大海物語』の3モードは大きなチャレンジの一つであり、『大海物語』のヒットにより以降の海物語シリーズにも搭載されることになりましたので、一つのターニングポイントだったのは間違いありません。ただ実はその一方で、完成度が高くなったことにより、社内では「これ以上何ができるだろうか」という行き詰まり感が出てきていました。そこで私は、開発が感じているその壁を打破すべく、まだできることはあると伝え続けて、それによって生まれたのが「沖縄」などのシリーズ機や「アグネス・ラム」などのコラボです。新たな海の世界が広がっていくきっかけになったという意味でも、大きなターニングポイントになったと思います。

編…今では複数のモード搭載が標準となって、例えば「確変中は海モードにする」など個人の好みによって使い分けるのも、もはや当り前になりました。

盧…海モードが好きな方はずっとそちらで遊ばれていますし、近年は様々なカスタマイズも搭載されていますから、『海物語』というベーシックな部分にお客様が「味付け」をするといった、独自の遊び方をご提案できているかもしれません。

編…一方、いわゆる“海以外”のシリーズ機やパチスロなども多数発表されていますが、そちらについての今後の戦略や見通しはどうお考えですか?

盧…弊社では、もちろん海シリーズだけでなく各種スペック含めパチンコ、パチスロ、そして未知のゲーム性を持った遊技機など、オールラウンドに進めていこうと社内で鼓舞しています。確率やゲーム性の幅はもちろん、独自コンテンツや版権、そしてパチスロにおいても全てしっかりと進めていきたいと思っています。

編…今年6月より盧社長の新体制に変わられて以降、御社の取り組みや方向性について具体的なビジョンがありましたら教えて下さい。

盧…新体制になって以降、開発、販売、管理それぞれが分業体制でいい方向に頑張っていますし、私自身、全国を回って社員全員に会うことも進めています。海シリーズをはじめオリジナル、版権、各種スペック、パチスロなどオールラウンドで取り組んでいくために「昨日よりも今日、今日よりも明日、もっと面白いパチンコ、パチスロを作るため愚直にやっていこう」と声掛けをしています。「皆さんせっかくパチンコが好きで入社して来ているので、その気持ちを大切に今後も頑張っていきましょう」という方針の下、今後も呼びかけを行っていきたいですね。(後編へ続く)

 後編は、具体的な今後のビジョンをはじめ遊技機メーカーの組合(日工組)副理事長としての提言、そして今の業界を表す「一文字」の発表など、さらに盛りだくさんでお届けします。お楽しみに!(後編はコチラ