【球面体ノート11】*ゼロタイガー40年*羽根モノ誕生前夜について

 2021年は、羽根モノの元祖『ゼロタイガー(平和)』登場からちょうど40年。しかしその歴史的存在も、ある日突然パッと生まれたわけではありませんでした。

 上の写真は、『ゼロタイガー』の少し前に平和から発売された特電機(※特別電役機の略。電気によって動く役物を使っている台の総称。ちなみにそれ以前から存在した電役機は、役物入賞時電気信号によって連動したチューリップを開かせるタイプの総称)『ゼロ戦』です。見た目はソックリですがゲーム性は羽根モノとは異なっており、盤面下部に並んだチューリップの上に配置されたセンサーを玉が通ると、それに対応した左右どちらかの羽根が「8秒間に6回」などといった開閉をするようになっていました。

 一番大きな役は中央下のセンサーを通った時で、左右の羽根が8秒間開いたままになり、玉を沢山拾う大チャンス。当時は10カウントもまだなかったため、いくつ拾っても大丈夫だったのです。

 また、役物内部手前には3カ所に区切られた穴があり、まだVゾーンという認識はなかったものの、カタログによれば中央に入った時は「8秒間に6回開閉」という動作が追加されたようで、いわゆる“特別感”というものが既に存在していたといえるでしょう。

 しかしこの機種は残念ながらあまり販売台数が伸びず、当時の開発者はせっかくなのでこの役物を生かした台を作ろうと、羽根が常に左右同時に開いて玉をガバッと拾うダイナミック感や、Vゾーン入賞によるラウンドの繰り返しといった独自のゲーム性を生み出していったのです。

 そうして誕生した機種は『ゼロタイガー』と名付けられ、シリーズで25万台を越える大ヒット作に。同時にこの機種によって「羽根モノ(第二種、ヒコーキタイプなど呼称も色々)」というジャンルが出来、今日に至るというわけです。

 さて、ここまでは羽根モノの登場エピソードとして割と広く知られている話ではありますが、戦闘機を役物に配置するというアイデアについて、興味深い機種の存在が明らかになりました。

 写真上は、西陣が1978年に発表した特電機『スーパードン』です。中央にはゼロ戦が配置されていますが、ゲーム性は驚くべきものとなっており、

▽中央ゼロ戦左右の溝に6個ずつ、最大12個の玉が貯留可能(打ち手は枠にあるボタンで一気に落下させられる)⇒▽入賞が16個(※詳細は不明)に達すると派手な音とともにプロペラが回転し、その時枠のボタンを押すとチューリップが3個開放して貯留された玉が落下するので、まとまった出玉を獲得できる

 といったプロセスが特徴となっていました。この機種では羽根部分が動いたりはしないものの、ゼロ戦と爆弾に見立てた玉のダイナミックな動きが新たなゲーム性を生み出していたのは間違いありません。

 パチンコでは、当時インベーダーゲームの大流行などによって打ち手の減少が問題となっていましたが、西陣ではいち早く『スーパー〜』と名付けた特電機(※命名は西陣の製造部部門であるソフィア)のシリーズを発表。業界ではこうした派手な特電機を発表することで、ファンの呼び戻しに躍起になっていたのです。

 以上、羽根モノの元祖『ゼロタイガー』が誕生してから40年という区切りにあたり、その前夜ともいうべき時期に生まれた2機種をご紹介しました。1970〜80年代にかけて、これらの特電機が羽根モノというジャンルの誕生に大きく役立っていたことを、忘れてはならないと思います。

※協力…(株)平和

    (株)ソフィア(順不同)

※画像や文章の無断転載を禁止します